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「子供に何も買ってやれない」社会の底辺で生きる人々の叫び──反マクロン・デモ、怒りの真相
https://www.newsweekjapan.jp/stories/woman/2018/12/post-114.php
2018年12月04日(火)18時10分 西川彩奈(フランス在住ジャーナリスト) ニューズウィーク
デモ参加者たち(Photo:Ayana Nishikawa)
<クリスマスシーズンのフランス全土で、マクロン大統領の税制に抗議するデモが続いている。デモ参加者は一体どんな生活を送り、何を訴えているのだろうか? 現地から声を届ける>
12月1日、フランスで3週目に突入した反増税のデモが暴動化し、首都パリでは都市機能が麻痺した。この事態を収拾するため、エドゥアール・フィリップ首相は3日、各党代表との協議に入った。エマニュエル・マクロン大統領の支持率は26%まで下がり、危機的状況に立たされている。
1日、フランス全土で起こったデモに13万6000人、パリでは1万人が参加した。パリ市内の観光名所などで、一部暴徒化した参加者により、放火や店舗荒らしが起こった。内務省によるとフランス全土で262人が負傷、1人がフランス南部アルルで死亡した。
【参考記事】「デモ参加者」って誰だ──フランス燃油税高騰デモは政府に見捨てられた地方住人
11月17日から続くこのデモは当初、来年1月から燃油税が値上がりすることへの抗議として始まった。しかし次第にマクロン大統領の全般的な税制に不満を持つ国民の、「反マクロン・デモ」へと進展。現地紙「ル・モンド」の報道によると、黄色のベストを着用したデモ参加者の数は、11月17日には28万2000人、11月24日には16万6000人にのぼった。
3回目の大規模デモが起こった翌日の12月2日、マクロン大統領はアルゼンチンで開催された20カ国・地域(G20 )首脳会議から帰国後すぐに凱旋門などを訪れ、被害を視察。その後、フィリップ首相や治安当局幹部らと緊急閣議を開いた。マクロン政権は、デモ参加者や政党の党首らと対話を続けていく方針だ。
SNSを通して集まった「黄色ベスト」に、代表も組織の構造もない。彼らが訴えたいことは何なのか。デモが起きた1日、現地で参加者の行進を追い、声を聴いた――。
■非現実的な世界と化したパリ
「まったく、シュールリアリズムの世界だわ」
コンコルド広場に面するチュイルリー公園。凱旋門の方角から立ち上がる黒煙を眺め、あちこちから響く爆発音やサイレンを聞き、目の前で燃え上がる炎を見つめながら、若い女性が興奮したようにスマートフォンで母親に安否を連絡していた――。
観光名所は衝突の舞台に (Photo:Ayana Nishikawa)
3週目に突入した今回の大規模デモでは、一部暴徒化したデモ参加者などにより、数々のパリの観光名所が衝突の舞台となった。11月24日に大規模な抗議活動があったシャンゼリゼ通りでは、治安当局が通行規制をした。一方で、暴徒化したデモ参加者が、第一次世界大戦の無名兵士が眠る凱旋門に落書きをし、館内に侵入、マリアンヌ像を破壊するなどした。
— Philippe Bélaval (@PBelaval) 2018年12月2日
凱旋門付近の破壊されたバス停(Photo: Jérémie Hallez)
凱旋門付近で放火された車(Photo: Jérémie Hallez)
現地紙ル・モンドによると、高級ブティックが軒を連ねるフォーブル・サントノレ通りの警察所は破壊され、パリのある場所では警察車両からH&K G36(ライフル銃)が盗まれたという。高級5ツ星ホテル「ペニンシュラ」があるクレベール通りでは暴徒化した参加者が車に放火、「この悪党め」と叫びながら銀行を破壊した。その他パリ各地で、スーパーマーケットから酒類などの略奪、車両や建物などの放火や、レストランの破壊なども見られた。
クリスマスシーズンで賑わう「シャネル」、「ディオール」などの高級ブランドショップのガラスも破壊されたという。老舗百貨店「プランタン」や「ギャラリー・ラファイエット」の客は一時避難した。
記者がパリ・オペラ座からデモ隊を追った際は、「マクロン退陣」、「みんな一緒に」と叫びながら行進をするのみで穏健な印象だった。
リヴォリ通りに集まった黄色ベストの群衆(Photo: Ayana Nishikawa)
一方、コンコルド広場付近に到着したころには空気が一変。治安当局と、リヴォリ通りを埋め尽くすデモ隊が衝突し、催涙ガスが当局によって噴射された。肌や喉にヒリヒリとした痛みが走り、視界がかすむ。一部の人々が走って避難をし始めた。
催涙ガスに咳きこみながら避難する人々(Photo: Ayana Nishikawa)
その後、リヴォリ通りに隣接するチュイルリー公園内に入ると、黄色ベストを着用していない10代の少年グループが大音量のエレクトロ音楽を流しながら、美術館に投石をしてガラスや監視カメラを破壊していた。彼らと一部のデモ参加者は公園敷地内で放火をし、治安当局が発煙筒を投げるなどして対応した。その後、10人ほどの男性のデモ隊が公園の大きな鉄製の門を押し倒して破壊し、下敷きになった人たちが救急車に搬送された。
記者が驚いたことが、この光景から約20m離れた同公園内の移動遊園地やクリスマスマーケットで、子供たちが遊んでいたことだった。
公園内で放火する、暴徒化した少年グループや黄色ベスト。(Photo: Ayana Nishikawa)
当局とデモ隊が衝突し、爆発音やサイレンが鳴り響くすぐ側の移動遊園地で子供たちが遊んでいた。(Photo: Ayana Nishikawa)
デモ参加者の心境。「給与振り込み5日目で残金ゼロ」
デモ参加者の多くが、地方からこの日のためにパリに訪れていた。年金について抗議をする高齢者、燃油税値上げに不満を漏らす人、反マクロンの極右や極左など様々な人が参加していたが、話を聞いた人たちは口を揃えて「一生懸命働いて税金を納めているのに、月の終わりに苦しむのはうんざりだ」と憤った。
ナディン(左)と友人のファビアン(右)(Photo: Ayana Nishikawa)
パリ・オペラ座前で杖をついて佇んでいたナディン(70)は、「一般社会貢献税(CSG)の税率引き上げにより、年金受給額が減った。このままだと、孫にお小遣いすらあげられない」と、不満をこぼした。
ジュリアン(左)とジェレミー(右)(Photo: Ayana Nishikawa)
ルーブル美術館周辺で、北仏ノルマンディーの旗を掲げていたジェレミー(34)とジュリアン(33)。「政府から無視されているように感じる」と憤るジェレミーは、こう続けた。「母は600ユーロの年金から税金など支払った後、手元には200ユーロしか残らない。マクロンは、田舎に住む国民の生活も考慮するべきだ」
クリストフ(Photo: Ayana Nishikawa)
北仏ピカルディ―地域圏から参加したクリストフ(59)は溌剌とした様子で、「一番腹が立っているのは、マクロンの傲慢な態度だ。外国のことばかりで、自国のフランス人を蔑ろにしている。購買力が下がって苦しんでいる国民の声を『聞いているフリ』をするのは、許せない」
ファニー(左)とジゼル(右)(Photo: Ayana Nishikawa)
高級ブティックの前でビラを配っていたファニー(68)とジゼル(46)は、「家」がなく、市から補助を受けた施設に暮らしているという。
「定年退職するまで38年間、きっちりと税金を納めてきた。それなのに今は毎月の生活費は雀の涙ほど。毎日同じサンドイッチ(3.5ユーロ)を食べて、同じ服を着ている。健康に良い野菜や魚を買って食べたいのにお金がない。レストランでの食事や、服の買い物なんて10年近くしていない。年金は少なくなる一方で、税金だけどんどん上がっていく」
一方、同様に市から補助された施設で暮らすジゼルは「兄は、路上生活を送っている。マクロン政権は富裕税(ISF)を廃止するなどお金持ちには優しいけど、社会の底辺で暮らしている人間の声も聞くべきだ」と語った。
クリスチャン(Photo: Ayana Nishikawa)
Tax(税)とExit(出口)の造語「Taxexit」と書いた紙を貼ったヘルメットを装着するクリスチャン(70)は、妻と南仏から毎週黄色デモに参加するためにパリに来ているという。「来年1月からの燃油税値上げは辞めるべきだ。僕の住む田舎では、病院までの距離は片道40q。相当な距離を毎日運転するから、生活に響く」
また、パリ郊外に住む男性(35)は「仕事を2つ掛け持ちしている。毎朝3時に起きて、パリの勤務地まで45q運転して、夜帰宅する。これだけ働いても生活費と車の燃料費にお金がすべて飛んで、子どもに何も買ってやることができない」と、まくしたてた。
一方エンジニアの男性(34)は、「給料は1400ユーロ。家賃や電気代など請求書をすべて払い終わったら、5日目に口座は残額ゼロになる。月末は−1000ユーロだ」と、先行きの見えない生活にうんざりした様子で答えた。
購買力が下がった低・中所得層に"増税"の負担
エマニュエル・マクロン大統領が2017年の選挙で就任後、失業率は約9%のまま滞っている(欧州連動の平均失業率は6.7%)。2018年の税制改革では、超富裕層に有利となる富裕税(ISF)を廃止した。その一方で、庶民に影響のある一般社会貢献税(CSG)の税率引き上げを行い、年金受給額が減った高齢者の怒りを買った。
来年1月からの燃油料増税は、購買力が下がっている国民の生活苦に追い打ちをかけるかたちになる。
12月8日にも、第4回目の大規模デモの呼びかけが起こっている。
[執筆者]
西川彩奈
フランス在住ジャーナリスト。1988年、大阪生まれ。2014年よりフランスを拠点に、欧州社会のレポートやインタビュー記事の執筆活動に携わる。過去には、アラブ首長国連邦とイタリアに在住した経験があり、中東、欧州の各地を旅して現地社会への知見を深めることが趣味。女性のキャリアなどについて、女性誌『コスモポリタン』などに寄稿。パリ政治学院の生徒が運営する難民支援グループに所属し、ヨーロッパの難民問題に関する取材プロジェクトなども行う。日仏プレス協会(Association de Presse France-Japon)のメンバー。
Ayana.nishikawa@gmail.com
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— ニューズウィーク日本版 (@Newsweek_JAPAN) 2018年12月4日
まさに日本の未来…#消費増税反対
— ポロ (@peropero_01) 2018年12月4日
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「子供に何も買ってやれない」社会の底辺で生きる人々の叫び──反マクロン・デモ、怒りの真相
— hg (@hg96438098) 2018年12月4日
(ニューズウィーク)
フランスでもポピュリズムの台頭か。
今後数年のうちに世界は景気後退に陥るのではないか。
それ以上に政治的不安定が生じると思える。
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— Gnews (@Gnews__) 2018年12月4日
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— シンドラーのリスト (@Thisimyfavorite) 2018年12月4日
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